喉から出ない声
新人さん

夕空がずっとあのままになってる
写真みたいだね
つりさげられて展示物のふり
僕は脹らんで大きくなってる
とめどなくすりつぶされているというのに
このことには驚いているよ
僕は僕になるんだね
僕自身だから

また小さくなれるかな?

引き裂かれるのは嫌だね
夢の中で見たよ
魚みたいになって
海を泳いでいたのさ
波を蹴散らして
僕は子供の頃船長だったね
笛を吹いて
水兵帽もひとっとびさ
よく似合ってるって

楽しかったなぁ。

青春は移ろいやすいね
それは一つの季節だから
小雨降る駅でさめざめと泣いたあの子を
慰められなかった
今の僕ならできるかなもうどうしようもないけれど
戻れるならあのころがいいな
学生寮に集まって
みんなでお酒飲んで寝てた

懐かしいなぁ。

※※※

これら声にもならない言葉は
僕の喉からけして発されることはない
話したところでどうにもならない願望を
口にすることは悲しいからだ
語られず死んでいく言葉達は
どこへ行くのだろう
その不毛な墓場が
僕の体という空間に蓄積される
それはまるで高速道路の余白みたいだ
ありもしない傷つきやすさに
酔いしれている
降り積もれ、言葉よ
夜の永遠に
置き去りにされる前に


自由詩 喉から出ない声 Copyright 新人さん 2017-05-21 23:45:27
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