エロスの奥(二)
ひだかたけし

貴女は秋のあの日、
夜明け前の碧い天蓋に
独り揺らめき身を投げた
硬く冷たい肉体を現に残し
何処までも独り遠く逃れ去り

貴女という魂は私の中で生き
私という魂は貴女の中で生き
何度となく共に逝った
無限の光明の意識を灯し
生動する魂の界に浮遊した
何の打算もなく与え求め繋がり合い


突然独り置き去りにされた私の歳月
死は再び何処までも暴力と化し
無機の歯車ノッペラボウ
ギリギリ廻り迫り軋んで
生への死の侵入が加速し続ける
衰弱し空っぽになった私を埋め尽くし

この秋のまた到来し
吹き出す涼やかな風に
金木犀の香が帯を成して
過去から未来から去来する

その時その瞬間を掴まえて
私は私という魂は
内底から湧き出る憧憬のまま
焦がれる貴女の居る故郷へ
飛翔することができるだろうか
恐怖を乗り越え青く青く澄み渡り


響き澄んで  、 澄んで響く 、 奥処の木霊



自由詩 エロスの奥(二) Copyright ひだかたけし 2017-05-18 15:03:13
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