コンパスのように立て
ただのみきや

コンパスのように立て
最初から最後まで
近寄ることも遠ざかることもない
己の中心に
想いは帆のように憧れを孕み
どこまでも出歩くだろう


コンパスのように立て
滾る情熱は千切れるほどその手を歩みを
遠くへと より遠くへと だが
想うことは近く
知ることは遠い
目を瞑れ 今は 耳を澄ますために


コンパスのように立て
時を経てやがては触れるだろう
かつて届かなかった場所 届かなかった心へ
それでも依然として遥かに多いだろう
海原に降りた雨粒 俄かな波紋たちが
愛憎の交差を幾つ重ねたとしても


コンパスのように立て
そこより内はなくそこより外もない
誰とも同一視せず
天来の支点を保つ人
時に誰かを支える腕に あるいは
円やかに閉じて往く生の何処かで



       《コンパスのように立て:2017年5月17日》






自由詩 コンパスのように立て Copyright ただのみきや 2017-05-17 21:08:36
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