無い心
しらいし いちみ
キッチンをピカピカにして良い女演じて見せる吾にウインク
「待ってるよ」その一言にスロープを心が先に駆け下りて行く
其処からも「ちがねえだろ」君の言う我は其処から違う距離有り
本棚に並びておりぬ一冊に我が手を待つ愛おしさかな
次に飛ぶそのひとひらをチューリップ真上向きつつ待ち侘びている
水槽の歪み見つけて心をば重ね合わせる深夜零時に
頬撫でて心地良きかな立ち尽くし誰も呼ばない夜風と二人
出来るなら消しゴム一個とえんぴつと消してまた書く心の模様
雨音の調べに乗せて今日の朝洗い流せし我も罪の子
走るなら君と同じスピードで少し景色も見えてゆっくり