エロスの奥(一)
ひだかたけし
流出する
わたしが
あなたの中に
あなたの温かな肉に
包み込まれ開放され
蕩けていく溶けていき
突き抜ける意識の脱落こそ
私という生きた魂の露呈
[響き澄んで 、 澄んで響き]
流入する
あなたが
わたしの中に
わたしの燃える肉に
全て委ね預け開かれ
蕩けていく溶けていき
零れ落ちる空白の吐息こそ
貴女という生きた魂の輪郭
[響き澄んで 、 澄んで響き]
流出し流入する
流入し流出する
昼となく夜となく
脱落し零れ落ち
混沌の宇宙を漂う
広大な海原に
足場を失い
繰り返される抱擁
柔らかな一条の光となり
安心して怖がらないで
大地が割れるまで
燃え上がる太陽、
灰となる肉体、
魂の揮発、
惜しみなく捧げ合い
[響き澄んで 、 澄んで静まり]
そうして
貴女は秋のあの日、
夜明け前の碧い天蓋に
独り揺らめき身を投げた