エロスと憧憬
白島真

*エロス

熱い唇が夜に溶ける
重ねた皮膚は
殻のないぬめやかな二枚貝

弄ばれた魂が
半周遅れの月影に
しろい波濤を刻んでいる

脱ぎ捨てられた衣に
まだ残る体温が
生温い喘ぎの風となるとき
あなたへの想いは
サテュロスの半身を
しずかに抱擁する


*憧憬

おはよう空
かつての生者の
かなしみの蒼が溶けている

おはよう空
動かぬものへのあこがれが
俯いたままの視線を輝かせる

おはよう空
ひかりが思索の硝子にさして
ひとつの ひとりの
紗がひらかれていく


自由詩 エロスと憧憬 Copyright 白島真 2017-05-13 16:38:04
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