憂鬱
卯月とわ子

君の胸元で十字架が揺れる
神様の創ったという楽園はもうすぐだよ
だって子供たちの笑い声が聞こえる


カビの生えたパンを大切そうに抱いていた頃は
幸せというものが此処にはないのだと信じていた
熟れた真っ赤な果実を齧る今は
幸せというものがあそこに在ったのだと感じている

信じるという事はとても強いことだよ
僕は君との距離を埋められずにいる
時間が経てば経つほど遠くなる君の
胸元で揺れていた十字架は何処へ行ったのだろう
君だけが変わったのだと責めることは出来ないよ
だって僕も変わっているのだから
だけど僕には君とのこの距離が耐えられないでいる
きっと独りとか孤独とかそういうものの尻尾を見てしまったせいだろう

君の周りは華やかだね
目の前だけを見ていれば
それを簡単にそして強く信じることが出来る
僕にはそれが出来なかった
楽園という夢が大きすぎたんだ

ねえ
子供たちの笑い声は遠くなった
ねえ
君は良く笑うようになった
ねえ
僕は何処へ行けば良いのだろう


自由詩 憂鬱 Copyright 卯月とわ子 2017-05-07 18:17:59
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