初心者のための赤
卯月とわ子
赤いボールペンばかりインクがなくなっていく
これでもう4回目の買い物
忘れない様に赤のインクを握りしめてレジへ
研修中のお嬢さんは
奇妙な顔をして作業をこなす
3つパックのプリンと無糖のヨーグルト
そして赤のインク
あの人の好物とわたしのおやつ
添削のための赤いインク
あの人の言葉はどんな教師のものよりわたしに刺さる
ひどく素直になって
二人だけの授業に参加するのだ
教科書なんていらない
春の午後の気だるいひと時
欠伸をかみ殺す必要もないほどの
濃密な時間は
気まぐれにやって来て
気まぐれに帰っていく
さあノートを開こう
鉛筆の黒の上を走る赤は
今日もわたしを導く