きょうかい。
木築

きょうかいせん、って言葉があるじゃない。
と、いった、彼女が、線をひいた。
むじひに、スッと切れめをきれて、
彼女は、だからね、と無意味なことば。

ひとつひとつが、正義である必要はなかった。

わかっていて、なにが、わかっているんだよ。
ただしい、ということが、なにひとつただしくはない、
そんなただしさ。

理解ができないよ。
あふれる液体が、シリコンカップに、
カチカチにこおらせれば、きっと形になるでしょう。

わかんないでしょ。
彼女がせいいっぱい、つきとばしていたもの、
の、ひとつ、ぼくはうっかり拾ってしまって、ああ、むざん。

冷却温度が足りなかったので、
ぶっしつは流れでてゆきました。

あしもとにしたたるので、
転ばないようにきをつけて、
あ、
彼女がくつしたをもちあげて、
ぬれちゃったよ、
と、いったので、ぼくと彼女のきょうかい、は、
ガラガラとこわれていきました。

しみてしまったものは、もどりません。
よごれてしまったね。
ぼくのこと、わすれてしまってもよかったよ、
でも、
ね、
しみてしまったことがかわらない。

かわいそうだね、って、おもうことが、
彼女をめいいっぱいやさしくつつむ、
あるひとつの暴力の、
あふれてしまったちからのことを、
きょうかいで、懺悔したら、
ぜんぶ、なかったことになりますか。

むじひ、な、切れめ、がやぶれてしまった。
ああ、かわいそう。


自由詩 きょうかい。 Copyright 木築 2017-05-02 02:18:56
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