プードル
chiharu


わたしは黒いプードル
年齢は10歳
人間で言えば60歳を過ぎた
おばあちゃんってとこかしら

わたしは今、ある事情から
ここ、下北沢のペットショップで
里親さんが来てくれるのを待っているの

白内障ありますとか
手術痕ありますとか
あまり知られたくないことの書かれた
大きな紙をガラス戸に貼られている

わたしの周りの子達は
みんな小さな子犬と子猫
貼られた紙なんか読まなくても
艶のない毛並みと真っ白な瞳を見れば
みんな私の前を素通りしてゆくわ

子犬や子猫のガラス戸には
命の値段が書かれているんだけど
わたしには値段が書かれていない
わたしの命には値段がないのかしら

そんなことはもうどうでもいいの
この狭い箱の中から出して欲しいの
早く自由になりたいの
死んだら自由になれるのかしら

今日もわたしの前で
足を止めてくれる誰かを待っている


自由詩 プードル Copyright chiharu 2017-04-30 11:48:44
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