ひとつ 花歩
木立 悟





夜が割れ
なまあたたかい風が降り
明日の朝を見せ
ふたたび閉じる


標は暗く
音は見え 川は見えず
小さな鉄の声が灯り
水に映る夜を扇ぐ


三角の紙の群れのなかを
四角の紙が浮き沈みする
貼られた布の空
明るい雨


苦く静かな闇のなかで
流れだけが近くに居り
ぬるく震える波を打ち寄せ
指を仄かに照らしている


水たまりを吸いに来る蝶
映らぬ羽を動かしている
左目の重さが飛び去る時
蝶たちもまた飛び去ってゆく


朝は花 昼は骨
降りしきる黄ばんだ白のなか
常にそこに居る冬の手を取り
夜のうたを浴び歩き出す





















自由詩 ひとつ 花歩 Copyright 木立 悟 2017-04-30 07:08:37
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