ひとつ 花歩
木立 悟
夜が割れ
なまあたたかい風が降り
明日の朝を見せ
ふたたび閉じる
標は暗く
音は見え 川は見えず
小さな鉄の声が灯り
水に映る夜を扇ぐ
三角の紙の群れのなかを
四角の紙が浮き沈みする
貼られた布の空
明るい雨
苦く静かな闇のなかで
流れだけが近くに居り
ぬるく震える波を打ち寄せ
指を仄かに照らしている
水たまりを吸いに来る蝶
映らぬ羽を動かしている
左目の重さが飛び去る時
蝶たちもまた飛び去ってゆく
朝は花 昼は骨
降りしきる黄ばんだ白のなか
常にそこに居る冬の手を取り
夜のうたを浴び歩き出す