ゴー ホーム
ホロウ・シカエルボク


虫はやたらに
ひとの周りを彷徨くものだし
騒ぎに慣れたら
気にもならなくなるもので

ところ構わず
火を放つ若造の手際は
そもそも美しくない
顔中に吹き出すニキビと同じで
醜悪なだけの代物だ
甘やかしてもらいたいあまりに
逆上して牙を剥く犬だ

交響曲が流れている繁華街
日々の営みの中で
間違えた色みたいに浮かれている
のたうち回る作家や
肘を壊したマエストロの努力に見合うものなんてこの街にはあまりない

コーヒーショップの不馴れな店員は注文を間違える
訂正をするとなにかが失われる
誰もが自分の正義を信じ過ぎて
平和を叫びながらの戦争が始まる
ぼんやりしている間にコーヒーは冷めてしまい
口に含むと金属の味がする

運動公園で催しが行われている
華やかな行進曲が薄曇りの空でこだまして
平均的な幸せの渇望たちに色を与えている
頑張れ、頑張れ
誰に向かって張り上げているのか
まだ幼さのある母親たちの声は

エンジンを弄ってあるらしい原付が
やたらに吹かしながら表通りを走り抜ける
誰にも受けない道化
顔の代わりに髪を塗りたくるピエロ

海に近い川の流れは
いつでも山を目指しているみたいに見える
その上を果てしなく吹き過ぎる
遠慮ない風に煽られて俺はくしゃみをする

激しい春が生活をなぶっている
風邪が酷くなる前に家に帰ろう


自由詩 ゴー ホーム Copyright ホロウ・シカエルボク 2017-04-27 17:06:28
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