そらの匂い
草野大悟2

そらの匂いが
あじさいの花に
かぞえきれないかげを穿つとき、
虹の残り香が めをさます。

こどもじみた言いわけみたいに
するり、と
きえてしまった
あるはずだったものたち。

(どこへいったんだろう…

たどりつけない旅が
あめにとけていく日、
蝸(か)牛(たつむり)のすぐよこで、
カマをふるわせながら
なみだぐむ蟷螂(かまきり)がいた。
(なんにも切れなかった……なんにも

風は、きょうも、うすく笑いながら、
そらの塒(ねぐら)を
そっと 教えているのだ
(きっと…。


自由詩 そらの匂い Copyright 草野大悟2 2017-04-19 11:08:40
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