いと寒き春の夜に
坂本瞳子
足首が凍りつくほどの寒さを堪えて
桜の花びらを踏み付け
横殴りの雨の中を
傘を握りしめて前へ進む
灰色の空は遠く
希望を掻き消し
さらに冷たい風が吹き荒ぶ
嗚咽を押し殺して
目眩を忘れようと努め
なんとかたどり着いた家屋の
なんともならない冷たさよ
これが今の私の持てるすべてだと
この身を慰め
夜は更け行く
自由詩
いと寒き春の夜に
Copyright
坂本瞳子
2017-04-11 19:08:05