紙の鳥
木立 悟
大陸より大きな曇が
森のなかの
ただひとつ倒れた樹を見つめる
川に映る 自身を見つめる
横切る音が雨になり
小さなものを剥がす音が光になる
誰もいない国を過ぎる時
曇は小さな指を見た気がした
背中を支点に揺れる風景
原を分ける人工の風
朝の夢がよみがえる昼
高く高く 何も無い昼
理由もわからず
枯れた草の円
暮れのかたちが
火のように痛い
折り方を間違えて
羽の多い紙の鳥が
暗がりの川を流れゆく
細く長い 青と白の傷
誰もいない国
灰色の道 大粒の雨
棄てられた光の矢のはざま
曇は声を聞いた気がした