フラグメンツ はなびら
AB(なかほど)

さくら祭り 1

ソメイヨシノ
はクローンです
と理科の池野先生が言った
そこの桜も
不忍池のも
ポトマック川のほとりのも
同じように咲きます



      名前

      桜の花びらの
      ひとつひとつに
      名前をつけて
      しばらく会っていない
      もしかしたらもう会えない人達を
      眺めていたら
      君を思い出せないうちに
      最後の一枚が散った
      ので 
            (という 嘘)



春でした

陽も長くなって
もう無くなったと思っていた
花びらがみっつ
フロントガラスでふわりとしていた
走り出すと
「春ですね」
って言って消えていったあの微笑みのように
夕映えのなかへ
         ふわり




      春の告白

      毎年
      君は生まれ変わってゆく
      つまり
      こんにちは か
      ばいばい
      だ

      桜 咲くな まだ 散るな



のろし

岬の先に桜が咲いている
三つの頃から
その向こうまで行こうという気持ちでいつも見ていた
けれど
ついこの前
シーサイドラインが開通した
------
はじめて側に寄って
藤の蔓が上の方までつよく絡まっているのを見ていたら
ずいぶんと頑張ってきたのにね
と逆に言われてしまった



      春に過ごす

      南から風が強く吹いて
      あ、
      もうそんな季節なんだ
      と静かに笑った
      はなびらが
      はなびらでいられなくなるように
      静かに笑った



さくら祭り 2

その花はクローンです
ソウルにもワシントンにも北京にも
同じように咲く
その花がサハラにもチベットにも
そして シリアにも
咲けばいいと思う




   


自由詩 フラグメンツ はなびら Copyright AB(なかほど) 2017-04-09 17:45:53
notebook Home 戻る