アンゴラ山羊のみる夢は
そらの珊瑚
冬のあいだに育った
ふわふわの毛に包まれてみる夢は
ねじ巻き振り子のようにかなしかった
(なんでアンゴラ山羊になどうまれついちまったのか)
けれど
春のひざしに
あたためられて
気化していくので
残ったものはひどくやさしい草原だ
本当は
鎧のように
硬く強い毛がほしかったのだけど
今はもうそんな願いごと
なしくずしになる
てばなすことは
そう悪くない
ねじもねじ穴も
時を刻む音さえも
うすあおい空の深度を計ろうとこころみる
いろんな動物が
そうやって
気化させたものが
あふれかえっていて
みつめていると
うっかり泣いてしまいそうになるので
おしまいになるまで
人は
瞬きをくりかえす
ところでわたしのアンゴラ山羊はといえば
クローゼットの中で
てんでに虫に喰われちまっている