夜に至る夜
木立 悟
水に嫌われ
水で追われる
隠れることもできず
すぎてゆく日々
飛ばされそうになりながら
どこへ帰るともなく進みゆく
すれちがう花も
すれちがう蝶もわからない
金と緑の吐息のまわりに
音の粒はつらなりめぐり
いつでもそばにいる冬を
まぶたのかたちに降らせつづける
氷の下の花や蝶
見つめることしかできぬものらを
ただ踏みつけてはすぎる日々
蒼く蒼く すぎてゆく日々
どこまでも片方を欠いた径に
白い蛇が満ちてゆく
裂いても裂いても
いつのまにか治る胸の夜
炎の手を持つ小さな水が
自らに触れることのできぬまま
燃え上がる傘を捨ててはさし
捨ててはさしながら歩いてゆく