記憶の焼土
伊藤 大樹

記憶の焼土に
茫漠とひろがっている
透明を佇む石が
ひととき凪いでいる

点滅にさそわれて
浜まで来ると
むせ返るほどの潮の匂いが
過去を引き連れて
私を攫った

夏が焼けつく部屋に
窓は開け放たれ
頬を打つ清涼な風と
波打つ 真白いカーテン
テーブルの上のくすぶっている煙草

思い出の雨に打たれて
出さない手紙が流れつく岸辺に
透明な私の足跡だけが残る


自由詩 記憶の焼土 Copyright 伊藤 大樹 2017-04-01 10:27:07
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