桜前線が通り過ぎて
相田 九龍

桜前線が通り過ぎた
老木の桜並木は
今年まだうまく咲けない
どうしても桜が見たいと
君は優しいから言わない
僕らが遠出をするには
ガソリンが少し足りない

うまく咲けない老木の下で
芝生に座って楽しそうな人たち
「フライング花見だね」って君
あの人たちみたいに
待つことを少しだけ忘れるのも
いいのかもしれない

ありがとう
生まれてきてくれて
君にそう言いたかったけど
どこか紛らわしい薄紅の気持ち

空想の中で電車に乗って
本を読んでる君の横で
僕はこうして気持ちを綴って
車窓から見える桜に喜んで
目的地は実は目的地ではなくて
君といることが何よりの目的地で

桜前線が通り過ぎて
少し遅れて
芽が膨らんできた

君が笑ってくれて
ようやくここまで来た
芽が膨らんで
みんなが待ちわびている
満開の瞬間がすぐそこまで来ている



自由詩 桜前線が通り過ぎて Copyright 相田 九龍 2017-03-30 17:13:32
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