風の腕力
flygande



潮風を浴びている
白い丘
黒い岩肌、
なめらかな、
すべるように飛ぶ鳥の
くすんだ青の骨
、風に中指をのばす
調律師はもうなにも
弾かなくても、それが見えた

やさしい音楽に、べつの
やさしい音楽がかさなる
、調律師はふたをあけ
もうなにも、しなくても
その音が分かる



海岸線をさだめる
たとえば、
年ごとにうち拡がったり
退却したりする豆の花が
砂の領域を
摺りあわせていくように

しかし、
けれども、

つぎに、嵐
崩れおちる断崖
(手のひら、)
(笑うと、きゅっと下がる眉じり)
(廃車に、ひたいをつけて泣く
若すぎる窃盗者、)
たやすく地形はかわってしまう
どうせ声を、殺して



細長いグラスに
砂と水を入れる
それは水平線のための
そくせきの分度器

彼は
なんども盗みをくりかえす
不条理な星が
(なんの)、
ためのもの、
たちか
調べようとして

空輸される
夜の色の宝石が
そのとき、真上をすぎる



浜の、濡れたばしょばかり
あるく足跡

それは彼の意に反し
遠くまでつづいた


白い、

黒い岩肌
、あらゆるものを
統べるように飛ぶ鳥の
空の王の輝き









自由詩 風の腕力 Copyright flygande 2017-03-27 19:34:17
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