風の腕力
flygande
潮風を浴びている
白い丘
黒い岩肌、
なめらかな、
すべるように飛ぶ鳥の
くすんだ青の骨
、風に中指をのばす
調律師はもうなにも
弾かなくても、それが見えた
やさしい音楽に、べつの
やさしい音楽がかさなる
、調律師はふたをあけ
もうなにも、しなくても
その音が分かる
*
海岸線をさだめる
たとえば、
年ごとにうち拡がったり
退却したりする豆の花が
砂の領域を
摺りあわせていくように
しかし、
けれども、
雨
つぎに、嵐
崩れおちる断崖
(手のひら、)
(笑うと、きゅっと下がる眉じり)
(廃車に、ひたいをつけて泣く
若すぎる窃盗者、)
たやすく地形はかわってしまう
どうせ声を、殺して
*
細長いグラスに
砂と水を入れる
それは水平線のための
そくせきの分度器
彼は
なんども盗みをくりかえす
不条理な星が
(なんの)、
ためのもの、
たちか
調べようとして
空輸される
夜の色の宝石が
そのとき、真上をすぎる
*
浜の、濡れたばしょばかり
あるく足跡
それは彼の意に反し
遠くまでつづいた
、
白い、
丘
黒い岩肌
、あらゆるものを
統べるように飛ぶ鳥の
空の王の輝き