時の化粧
ヒヤシンス
時が静かに化粧をして私に迫ってくる。
時の誘惑は川沿いに咲く桜のように美しい。
誘惑を美しいと捉える心は不純であろうか。
年を追う毎に時の魅惑に囚われてゆく。
一瞬で燃え盛る時の間に私は嵌ってゆく。
彼女の裸体は妖艶で誰かの描いた絵画のようだ。
その顔は情熱で溢れている。
喘ぐ声は、地の底からの響きだろう。
もはや私は彼女の虜となる。
セピア色のその背中は滑らかで、とても淡い。
私はその背中に優しく接吻する。
これは夢だろうか。
気が付くと彼女は知らん顔して私の脇を通り過ぎ消えてゆく。
私の鼻腔に薄い化粧の匂いを残したまま。