コレクター
梅昆布茶
世の中の気に入ったものすべてを集めることはできないが
ときおり巡り合う素敵な情景や言葉を僕の何処かにスケッチしておこう
ときにはロボットが生産ラインで溶接した鉄板でできたちいさな車で風をさがしにゆく
部屋のなかには背表紙だけで出会っていない本もあるし
日々のちいさな発見は舞台裏へと誘う秘密の通路
ベルリオーズを聴きながら
揚げものの上がり具合を色で判断して
キッチンペーパーを敷いた皿に積み上げてゆく
つけっぱなしのテレビでは南スーダンPKOとトランプ氏がせめぎ合い
僕は煙草を吸いながらからっぽの押入れの下の段をどう活用しようか考えている
雑居ビルの喧騒のなかで読書するような事なのだ人生は
誰かが言ってたっけお産と打算は女の特技だって
確かに思い当たる人もいないではないがそう決めつける勇気もないし
僕たちはちいさな資源で生きて行けるはずの日々を
いつか思い起こさなければならないのかもしれないのだろう
無限におもいをいたすまえに日々のお気に入りのメロディーを
採譜してみたり流れていってしまいそうな風景をスケッチに遺して
そして気に入った変換が見つかるまでキーボードを叩くピアニストなのかもしれない