夢の原型
梅昆布茶
夢のなか昏い洞窟のしたたり落ちる水滴と
森の朝の露が合成されてぼくらは生まれた
やがて酒場のにぎやかで気怠いピアノの鍵盤を踏んで
自分が誰だか気づきはじめるか忘れ去ってしまうかの
どちらかなのだ
教育実習の綺麗な先生の端正なゆびさきが黒板に描く世界史
校庭では道に迷ったアリスが赤のクイーンとチェス盤のうえ
お茶をしているばかり
ぐらぐら揺れる家を出て岬をめざしてあるいてゆく
ときおり雲の影が半島のうえを過りふと足をとめる
実現しない話ばかりするきみと決別して
風のゆくえをしらず舟をだす
冷蔵庫の隅で忘れ去られてゆくばにらえっせんす
読まなければならない本が沢山たまっているよな気もするし
図書館の背表紙の列のなかにも真実は棲まわない気もするが
歴史の浅い人類の一員である僕は
きょうも宇宙のどこかにかきつけてある
いちばんちいさな言葉をさがしている