おばはんが自称詩を読むと
花形新次

美しい人に
自称詩はいらない
美しい人は
そのうつ向いた横顔が
既に一篇の詩なのだから

おばはんが
自称詩を読むと
聞いた者は石になる
無表情のまま固まって
やがて砕け散る

おばはんの熱い息は
ドブの臭い
ドブの臭いの作り出す
愛と平和は
下水道を駆け巡る
ドブネズミのように

おばはんは
今自称詩人おばはんに
なった訳ではない
ずっとずっとずっと前から
自称詩人おばはんとして生きてきた

おばはんに懐かしむような
青春はない
夏の日射しに輝いた
長い髪の思い出はない
ずっと穴蔵の中でひとり
おばはん自称詩を読んで来たんだ

そしてすべてが
石になり
下水道になり
ドブネズミになった後でも
相変わらず
おばはんの息は臭い



自由詩 おばはんが自称詩を読むと Copyright 花形新次 2017-03-11 07:25:56
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