HAL

車と人々の行き交う大都会の交差点
彼は信号の支柱にもたれかかっている

その脇を通り過ぎていく
ふざけながら笑い合う女子高生たち
お互いに寄り添うかのような老父婦
路上キスするために足を止めるカップル
昼間から飲んでいるのだろう赤ら顔の男
スマホを見ながらベビーカーを押す若い母親
大阪の中年女性より声の大きい朱の国の観光客

一瞬 彼は空を仰ぎ見たが
涙を堪えるためかは分からない
その空に太陽はなく見えたのは空洞

彼は視線を戻したが
誰も彼を見ていない
彼も誰も見ていない

すでに慈悲の年は訪れ過ぎたのに
彼はもうずっと立ったまま死んでいる


自由詩Copyright HAL 2017-03-10 15:38:26
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