胡蝶の夢
長崎哲也
蝶が、
たくさんの蝶が舞っている
ビルとビルの稜線で区切られて
行き場を失くした空に
乱舞する蝶たち
今ある全ての理は、夢のように移ろい
留まることを知らない
今ある現実は、本当のことではなくて
幻なのかもしれない
夢を見ている私は、私ではなくて
私以外の誰かかもしれない
過ぎていく時間に流される、心
知は、宇宙の果てまで思いを馳せるのに
現身の現実は儚くて
この世は泡沫のように
湧き上がっては消えていく、蜃気楼
胡蝶の夢のように
さりとて、現に生きる身は
本能のままに生かされていて
思うことは、今日の糧のこと
その落差を埋められないでいる
今日もただ佇んで
夕日が星空に変わる狭間を眺める私が
いるだけ