夜をゆく
青の群れ
密室に詰め込まれた人々はただ寝静まっているふりをしていた
目を凝らせば二十六時を指す文字盤が見える
細長いスポットライトが客席をなぞって点滅を繰り返し
エンジンは緩急をつけながら唸り続けている
綺麗な腕に巻かれたお守りのような時計が時折光を反射して
カーテンの隙間から見える窓ガラスの上を
小さなガラス玉みたいな雨粒が流れていった
映写機に映し出された古い映画のように
目を閉じても記憶は高速道路の上を走り続けている
人間とその荷物と、かき消されて聞こえないはずの音すらも運ぶ
睫毛を濡らしてもだれにも気づかれることはなかった
スマートフォンへの向こう側への再会は特別と呼べるほどのことでもない
このバスには当然のように屋根がある
暖かい空気を小さな穴から吐き出し続けている
走りつづける、他人が充満した孤独
ただ私たちは共通の夢の中で眠る