祝福の呪文
しもつき七


その魂の美しさは通貨になる
ふかい森の奥でみどりいろに光る怪獣の眼と
契約して明るい場所まで走っていける
花嫁よ
ウェディングドレスが泥を食っても
きみはずっときれいだ
肉のわたしは獲物


ひくい重心でまわる星の天動説
信じることと愛することとは違いますね
唇の端からこぼれる泡の呪い
地鳴りのおとがして
宝石がくだける


誕生会みたいにテーブルクロスを飾って
ご馳走ばかり並べたらくちずさむ歌のソラシド
永遠の誓いに骨を砕かないように
期待に胸を奪われないように
わたしたちは笑う


叶えるための約束はリボン
こんなに頼りないやりかたで結びあった
未明に
光は満ちて
たくさんの忘れ物を照らしている
おめでとう、きみのすべてを祝福するから
振り返らずに走れ


この質量で生きていくと決めた
なにも捨てないしなにも拾わない手に
石のない指輪が光って
意志のない瞳を殺した




自由詩 祝福の呪文 Copyright しもつき七 2017-03-07 18:54:43
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