定年退職
葉leaf


自ら水晶の橋を作り
強度を改めながら渡ってきた人よ
あなたは無数の種だった
あなたから芽生えた茎をたどって
農村の体躯は静かに満ちていった
水路を設計することは
あなたの現在に次々と構造を与えた
ダムを管理することは
あなたの過去に適切な解答を与えた
視力が鋭さを失った分だけ
あなたの口はより豊かな微笑みをたたえ
あなたの足取りは大地の華やかな文様である
今あなたには一つの無が与えられた
この無は有と同一であり
あなたの岸に打ち寄せる豊饒な波である
あなたは海へ向かって自らを投擲するがいい
有と無を同時に偽装しながら




自由詩 定年退職 Copyright 葉leaf 2017-03-07 04:19:35
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