水族館
伊藤 大樹

ラベンダー色の海に身をひたし
悲しみを咀嚼した
ガラスの隙間から
誰かのページをめくる音がきこえる

屈折して
青い血が飛び散る
卵の殻のなかではぐくまれた
そうしていつか 荒涼たる浜辺へ降り立った

うつくしいものは
いつも知らないうちに腐っていく
遠い日の出来事
帰り支度する季節に
ひとり靴紐を結び直した

裸足で戯れた浅瀬に
記憶が亡霊のようだ
わたし(たち)は一体何にゆられて
何を夢見るだろう

名前も知らない魚が
泳いでいるのを見ていた ある午后


自由詩 水族館 Copyright 伊藤 大樹 2017-03-04 18:32:15
notebook Home 戻る