ruby
もり

啄木鳥が 脳天を
穿つ ヒールの音

充電切れの端末から
伸びるヘッドホンで
耳をふさいだ少年

急所は隠すもので
隠したところから
急所となる
先頭車両の不文律
スーツの背中には
古傷のような皺

アイロンでは
伸ばしきれない
皮肉とためらいが
地団駄を踏む 朝

36.8と表示された
体温計
ぼくは消える
絶対零度の夜にうまれた

太陽に飼われて
ネオンを食べている
未完成のドミノを
言葉はいたずらに
倒そうとする
私の喉はまだ乾いていて
だから私は眠れない

テーブルに叩きつけられた
グラスの破片から
逃れるより困難な夜は
交差点で
飛び散った夢よりも 無口に
残酷に
助手席の窓から 女がまた一匹
金魚を吐き出しては
アスファルトに明滅する
昨日 今日 明日

「なぜ ぼくたちは
出逢うことがなかったのか」

そう叫びながら
電車の
閉まりかけたドアに
突進していく鴉も
あれは
朝か
夜か


自由詩 ruby Copyright もり 2017-03-04 01:07:59
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