口紅
倉科 然

全方位に焼け剥がれた命は
無限の軌跡を描いて一点に収束する
その最中に見る光景
自覚的な痛みを伴った主観的な光景
ビル群
山間の谷間
火炎放射器を持った昔の軍人の写真
凍てつく凍土
あなたの温度
俯瞰的になれなかった私の見た光景
いつか収束して消える
そんな光景
他人との境界線すら危うかった私の自我
血の赤黒さを孕んだ私の唇
明日には収束してしまいそうな私の自我
消えてしまった私の色


自由詩 口紅 Copyright 倉科 然 2017-03-03 22:39:09
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