見えない星
水宮うみ
生まれて初めての今にいる。だから覚束ない足取りで、未来を望んだり過去を思い出したりして、今ってものを理解しようとしている。
今、昔の出来事を夢で見たよ。今、明日のために早く眠るよ。今、歩きすぎて足が痛いよ。今、なにもかもを抱きしめられるような気分だ。今、今、今。
いつだって今のことがよく分からない。未だに、ひとり夜を彷徨った十四歳の僕と別れられずにいる。
どれだけ時が経ったって忘れたくないと願った思いがあって、でも僕はその思いを少しずつ忘れていく。残念ながら、きっと十四歳の僕の願いは叶わない。
それでも、完全に忘れてしまった訳ではない。今は。
誰にだって、うまく言葉に変換できない、忘れたくないって強く思った願いがあるはずだ。
僕にしかないものなんてどこにもなくて、だから十四歳の僕はひとりぼっちじゃなかった。
みんな何かを願いながら、夜を歩いている。
僕たちは、星が見えなくたってロマンチストでいられる。