ないものねだり
やまうちあつし
世界の半分は
届かない手紙でできている
バファリンの半分が
やさしさでできているように
わたしは青い魚になって
行方の知れない手紙を探す
ふるさとのような街
海底のような夜
言えてないことを伝えるために
今ある言葉は焼かれねばならない
火をつけるライターが要る
だから焦がれる
もっとせつないものを
もっとはかないものを
もっともかわらないものを
もっともはてしないものを
わたしはねだる
ないものを
あなたは苦笑いするだろう
いつものマフラーと手袋
いつかと同じ手の振り方で
それがいちばん
比類ないのに