文章
水宮うみ
これは文章です。あなたは読み手です。わたしは書き手です。
わたしがあなたの文章を読むときは、わたしが読み手で、あなたは書き手になりますが、文章は文章のままです。
どんな文章を書いているときも、どんな文章を読んでいるときも、あなたはあなたで、わたしはわたしです。
それでも文章は、ふとした瞬間に、わたしをわたしでない所へ、あなたをあなたでない所へ、連れていってくれることがあります。
だからこそ、わたしたちは文章を書き、読むのです。わたしでないわたしになるために、あなたでないあなたになるために。
わたしたちは文章を通して、遠い遠い誰かに出会います。近しい人の違う一面にも出会います。会話だけでは知ることのできない、あなたがいます。
この文章で、わたしはわたしでない所へ行けた気がして楽しかった。あなたもそうだったら嬉しい。
これが最後の一行です。終わり!