愛の囁き
ヒヤシンス


 愛を囁くと梢が揺れた。
 協奏楽の流れる部屋に人は無口で
 病人の枕元に一輪の花をかざした。
 今在る優しさに皆耳を澄ませた。

 枯草の美に共感出来た時、私は和的な幸せを得た。
 忘れ去られる過去よりも創造する未来を選んだ。
 病人の静かな休息は私に安らぎを与えた。
 言葉を発する者は誰一人いなかった。

 人生の休息は一つの美である。
 玉響の命は大いなる美である。
 飾り気のない美こそは永遠だ。

 かざした花の奥底に私は永遠の美を見た。
 優しさの床に就く病人がたまらなく愛おしい。
 そっと愛を囁くとまた梢が揺れた。


自由詩 愛の囁き Copyright ヒヤシンス 2017-02-25 04:12:32
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