コップ一杯の宇宙
長崎哲也
ここに一つのコップがある
いつからそこに在るのか、誰も知らない
最初は空っぽだったそれに
少しずつ、ほんとうに少しずつ
永い時間をかけて
結露した水が溜まり始める
そこへ
空間に漂う塵が入って、ゆっくり底に沈む
時折、日の光を浴びて熱の流れがうまれ
動いては止まりを繰り返し
やがて小さな渦が生まれた
塵は舞い上がり
渦の中に取り込まれていく
光を浴びた渦はキラキラと
まるで小さな銀河のようにゆるりと廻る
あまりに魅力的だったので
ぼくは思わずそれを飲み干した
全てが無に帰するように
それは神の味がした