「蒼い旗」 一〇首
もっぷ

自由の日たずねたずねて二十歳の日迎えて視得た手遅れの傷


ふるさとは広尾のベッドのほかになし実家と信じた門は開かず


日が落ちる前にわかるのあたしにはあしたの雨があさっての雨が


泣きながら歩くものかと泣きながら走って捨てた私が捨てた


卵だけは赤玉を買い咎められそれきりになった訪問看護師


被災時にはかならず守る父母ちちははの若い一枚みじめな矜持


こいねがうすべてに遠い道のりは自分でとわかるけど座りたい


叱られた痕を想えず一人居の宇宙で祖父はほほ笑んでいる


片道の切符求めて上野からママにスマホを観ている桜樹


夕星ゆうずつのけなげも知らず東京の空に物言うよそ者は討つ



短歌 「蒼い旗」 一〇首 Copyright もっぷ 2017-02-19 14:00:08
notebook Home