「蒼い旗」 一〇首
もっぷ
自由の日たずねたずねて二十歳の日迎えて視得た手遅れの傷
ふるさとは広尾のベッドのほかになし実家と信じた門は開かず
日が落ちる前にわかるのあたしにはあしたの雨があさっての雨が
泣きながら歩くものかと泣きながら走って捨てた私が捨てた
卵だけは赤玉を買い咎められそれきりになった訪問看護師
被災時にはかならず守る父母の若い一枚みじめな矜持
希うすべてに遠い道のりは自分でとわかるけど座りたい
叱られた痕を想えず一人居の宇宙で祖父はほほ笑んでいる
片道の切符求めて上野からママにスマホを観ている桜樹
夕星のけなげも知らず東京の空に物言うよそ者は討つ