紅く晴れた夜に
末松 努

耳元に
毛細血管の危うさで
流れゆくのは
私の心臓

体中を駆けめぐる
火照った愛撫が
暴れ出すのを
待っている

水の臭いは排水溝へ捨てた
吐息を微かに白くして
私の心臓は
神経という神経を尖らせる

本音がどこにあるのか見失う
産毛を浮かせる掌が
世界を破壊し尽くしている
二人を遠くへ送り込む電撃に息ができない

私の心臓は呼吸を止め紅く腫れる
腫れているのに秘密になる
いまなぜこんなに麗しいのか
何の答えも求めない

明らかな醜さの中で
二人だけが美しいと叫ぶ
叫んで 叫んで 叫んで 叫んで 叫ぶ!
そして果てしなき命への連鎖を恐れまいと果てる

ただただ柔らかく熱い
出しあった汗の蒸発を舐め上げるほど熱い
その冷却の差が二人を裂こうとしたとしても
私の心臓はまた紅く腫れていく

ああそうだ
二人の秘密も間違いなく
くりかえし腫れ
今夜の空はどこまでも紅く晴れている


自由詩 紅く晴れた夜に Copyright 末松 努 2017-02-16 21:39:25
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