もう勃たないかもしれない
はだいろ
サラリーマンの味方のビデオボックスで、
うちへ帰るまでの時間を潰そうと、
60分グッズ付きで、1050円支払い、
適当に見つくろったエロDVDを持って個室に入る。
俺は自己目線モードのエロDVDが嫌いなのに、
全部が全部自己目線モードだったせいなのか、
それとも60分という時間に追われたせいか、
グッズにローションを垂らしても、
ふにゃふにゃしたままで、ちっとも固くならない。
このところ、ジュネリックの安い薬で、
約1.3倍くらいに固くして風俗に通っていたせいか、
それとも寒さのせいなのか疲れなのか、
いくら自分で乳首を触っても、ちっとも勃たない。
そういうこともあるといえばあるのか、47歳にもなれば。
朝、早い電車に長い朝日が差し込み、
眩しい温かみの中で考える。
俺の人生で、一番輝いた時って、いつだろうか。
いやそもそも、一度でも、俺自身が自ら輝いた瞬間って、一度でもあったのか。
向かいのおっさんの読んでいるスポーツ新聞で、
盛りを過ぎた惨めな芸能人のニュースが載っているのをもしも盗み読んでも、
少なくとも彼には輝いた瞬間があったのではないか。
そのおっさんはどうなのか。
どうですか。
隣のブサイクな女子高生よ。君はどうですか。
受験戦争肯定論というものがある。
俺は全く賛成しない。
だけど、確かに、受験で頑張って、ものすごく努力して、
良い高校や大学に合格するというのは、その瞬間というのは、
彼や彼女は輝いているのかもしれない。
人がどう思うにしろ、彼ら自身は花が咲くように嬉しいことだろう。
俺は受験は全部落ちた。
全く勉強しなかったから、全然悔しくもなかった。
ああ、なんの話をしているのかまたわからなくなった。
結局恋愛(ボーイミーツガール)が人を救う、なんていうところに、
小説や映画が落ち着いてしまうことに、
俺は失望する。
そんなまやかしで俺は救われない。
村上春樹の新作が、どうかそういう話ではないことを祈る。
もう勃たないかもしれない
ふにゃふにゃのままで射精してしまった
具合が悪いのか
俺の人生って一体何の意味があるのか
いやもちろんありませんけど
せめてもう一度民進党に政権を取らせたい
いや支持政党なんかありませんけど
あまりにも嫌いな人が多過ぎる
そんな嫌いな人と来月仕事でパートナーを組まなければならない
ああ嫌だ
電車の向かいの窓の向こう、
何であんなコンクリートで固めてあるのだろう
どんどん通り過ぎていく
俺が死んでもコンクリートは固まっているのだろう
枯れた木 小さな花
ねえ
俺はもう勃たないかもしれないよ