虹色の滴
そらの珊瑚

過ぎ去った時間の遥かさを
たやすくとびこえる色がある

枝葉のさまざまなありようは
忘れてしまったのに
あの日
落ちかかった滴のことだけを
覚えているのはなぜだろう
人生の岐路で
もっと重大なことがらが
あったはずなのに
今となっては
光を宿したあの滴ほどの
鮮やかな彩りを持たない

まるごとの
ひとよる
みみだけを とぎすませて
きいていた
雨の音階の
さいごのひとしずくが
小刻みにふるえている
今まさに
泪のかたちを産もうとしているのに
わたしはまたも
この手に
抱きとめることが出来ない
Coda
閉じられない精巧な連結
みずたまる箱庭のなかで


自由詩 虹色の滴 Copyright そらの珊瑚 2017-02-16 10:55:23縦
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