夢の反芻
星丘涙
半開きの瞼に
白々と夜が明け始めた頃
白い月が剥がれ落ちる
半覚醒の壁にもたれかかり
思いがけず振り向けば
通過した秒針が湾曲する
眩しい陽の光が差し込み
脳裏から羊は追い出される
コーヒミルの回転音の中
決まって眠気が欠伸をする
鵯の囀りが
冬の空気を縛り付け
ストーブの火は燃え上がる
空白の予定表は
雑木林の小径へと誘い
ドアの向こうには
現実という名の妄想がひろがる
線路の向こう側は
毎朝開かずの踏切の点滅と決まっていて
夢のまた夢の世界だ
トーストは何時もより香ばしく
バターは森永か雪印で
チーズも同じくだろう
程よくブレンドされたコーヒーと睡魔は相性が良くて
極上の気分を演出してはくれるが
カフェインの魔力は証明済み
私はトイレのドアの前で立ち止まり
首を捻り
耳から大切な答えが零れ落ちるのを感じる
それは夜明け前の忘れかけた夢
思い出せそうで
なかなか思い出せない夢
ようやく夢の反芻を諦めると
一日が始まるのである