ちっぽけなロードショウみたいなドライブ

大方忘れてしまった、夢みたいに儚い時間
そんな空気の層が降り積もって空は青く映るのです

毎日は透明な膜が抵抗感をつくる海のそこです
ときに日が陰り砂の底に埋もれてひとりぼっちになったり、
かなた頭上のきらびやかな色の群れに心を奪われたりもします

とても寒い雪の日に閉じた貝になるように
時間の感覚を取り落とした日にも際限なく波は寄せて返します

いえ、返せません
時に、避けようとさえ、します
正直、まだ上手には泳げません



日々があまりに透明なので、人の吐く言葉が痛烈な色彩を放ったり、
風の優しい色が咲くところを見たり、
逆に何も見えずに、迷子の子供のようになきたくなるときもあります

むしろ五月蝿いぐらいにデタラメな色がぶちまけられて、
元々が透明なことも忘れてしまっているのかもしれません

時間軸に沿ってほどかれていくページが幾重にも並んで、ひとは
行間をどれだけ豊かに泳ぎきるか、試されている気がして
先へ先へと意識がむくのでしょう

確かに終わらないおしゃべりは楽しい
けれどいつか過剰な意識の渦に溺れてしまいそうです


夕暮れについていったドライブで、車の群れを眺めていると、
偶然隣り合った車の男の子と目が通じました
こちらがにこりとかえすと、二人の間に可愛い花がこぼれました
信号が始まりを告げ、
二人は同時に手をふって別れました

それは一瞬の出来事だったのですが、それだけあれば
どんな空も渡っていける気がしました


春の海にははぐれはぐれの雲たちが集まってきます
むかし、まだ制服のスカートの裾を揺らしていた風が、
みんなに伝言を残したのでしょうか

もう2度とかつての大きな雲に戻ることはないけれど、
あたたかく寄り添うことはできると知りました

おもいでを持ち寄ってかこむ非常階段と
音の連なりは確かな絆なのでした

捨てることなんて、やっぱり、できませんでした



自由詩 ちっぽけなロードショウみたいなドライブ Copyright  2005-03-07 00:40:59
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