無題「森」
ツノル
海のない丘に暮らす森人
草花や木の葉に語りかければそれだけで幸せだった。
海はときに荒れ狂い
山は木霊が嘘をつく
誰かの言動に傷つき失望する。
もう誰も信用はできない。
親しい友に裏切られた。
もう誰も友人とは認めない。
まわりに誰も居なくなって
僕はひとりぼっちになってしまった。
太陽は欠け
月が微笑んでも
僕はその理由をずっと考えていた。
旋風は居場所を迷わせてしまう。
あるときもう一人の僕が現れて
そっと教えてくれた。
(おまえは道もわからずに誰かを探している。誰かに頼ろうとしているのか。)
見渡せばずっと森の中だった。
僕は風の在処を頼りに藪を抜け出して
ひとり歩いて行くことにした。