断絶
本田憲嵩

三十代の父親が
生まれたばかりの自分の息子を
社宅のマンションの一二階の窓から
投げ落とした


覚せい剤が欲しい実母は
再婚相手の男とつるんで
小学生の娘に
売春をさせていた


近所づきあいのほとんどない
ある姉妹の姉は
職探しのため
必死な気持ちで
ハローワークに通いつめた


姉は仕事を見つけられぬままに
脳内血腫
知的障害のある妹は
110番も知らぬまま
極寒の部屋で連鎖的に死に絶えた


妻も子も持てない
年収二百万円以下の収入しか
得られなかった男は
約ひと月以上まえに
とても粗末なアパートで孤独死した

ひと月以上たった後の
ようやくの発見


いつも
そばに横たわっていたのは孤独と断絶
経済的勝者たちに
つねに押し付けられていたものは自己責任論


幸いにも免れることができた者たちは
今夜も
酒場で
素知らぬ顔をしながら
楽し気に酒を飲む



自由詩 断絶 Copyright 本田憲嵩 2017-02-13 01:14:05
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