わたりがにのフィデウア ★
atsuchan69

わたりがにのフィデウアは、僕の恋人
半年に一回くらい、僕と妻は君を食べる
君はいつも白い渚からやって来て
まるごとぶつ切りにされ
黄昏の陽を浴びた二人に食べられる

君を飾る赤と黄のパプリカとセルバチコ
ミニトマトや酸味の強いレモン
そしてムール貝やら烏賊リングやら
ぶつ切りの想い出と朱く茹った腕やら脚やら
君との思い出を僕は妻と共有する

わたりがにのフィデウアは、君との時間
半年に一回くらい、海辺の店であの日を想う
君は、つかの間の日を僕とすごして
潮風の吹く戸外のテーブル席で
こんな僕を、それでも好きだと言ったんだ





自由詩 わたりがにのフィデウア ★ Copyright atsuchan69 2017-02-11 07:54:36
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