this room
flygande
この部屋で
あなたの魂の息に触れる
この部屋で
魂の息に触れられる距離で
この部屋の中で
あなたとあなたの横たわるあなたのあなたの体で
触れられる
この距離で
わたしの魂があなたの器に注がれ
あふれてしまったわたしが床を濡らした
指先に
触れる水が冷たく
凍ってゆく
寒い冬の中で
この部屋はこごえる魂をあたためるために
この部屋で
氷になってゆく傍らで
窓ひとつない空から
青い日々が永遠のふりをして
わたしたちに希望を見せる傍らで
それが希望という名前で呼ばれることをわたしたちは知らなかった
ただ横たわる体しか持たなかった
わたしの体とわたしのわたしの体に記入した日々が
歩くことのできる脚と
歩くことのできない脚が
この部屋には横たわり
わたしは歩くことのできないあなたの脚に触れて
あなたは歩くことのできるわたしの脚に触れた
あなたを歩かせたいと願ったわたしはあなたの脚を歩かせようとして
失敗した
世界が呪われてゆく音を聞いた
遠くで
わたしたちは呪われてゆく世界に怯えながら
たがいの脚に指先で触れたまま眠った
明日が
窓からすべり込んでこようとしていたのに
それを止める術もなく
やってきてしまう明日に
体に日々を記入された
降り注ぐ音楽が
わたしたちを満たす水になり
言葉は体を丸めたまま
わたしの体の中で眠った
わたしは子供を産むことができないのに子供を
呼ぶことができるからわたしの体は
たくさんの子供たちが溜まって
だからもし音楽が
呪われてゆく世界の音が聴こえたら
鳴り響く
呪う言葉を知っているのに
呪いを解く言葉を知らないわたしたちは
呪いを解くこともできない祈りばかりをつぶやいて
祈りがどうか呪いの音と協和して
優しい和音になることを願いながら祈りばかりをつぶやいている
草原を風が渡り
溶けた魂でびしょぬれになってしまったわたしたちの体を乾かした
すべてを
このわたしの体の中にある魂のすべてを
あなたに目撃されるとき
わたしはわたしの呪いを解かれ
あなたの魂を両腕でつつんで
傷付いた体を癒すかもしれない
骨を洗う川の
音もないせせらぎに
歩くことのできない脚をひたして
この冷たい温度はあなたにも似ていると言って泣いた
この部屋で
この部屋の中で
あなたの魂の息に触れられる距離で
あなたの魂の息の根がしずかに根を張り根を伸ばすこの部屋で
この部屋で
この部屋の中で
わたしに溜まったいくつもの魂
泥になって
この部屋のこの部屋とわたしの体よこたわる照らす
あなたの歩けない体まぶしい差し込んでくる明日とあなたの体の
呪いしか知らないわたしたちの朝
が満ちてゆく
この部屋の中
この部屋の中で
この部屋で
この部屋
この部屋の中で
この部屋の中で
この部屋の中で
世界を満たそうする呪いと同じ質量で
この部屋を満たそうとする希望くだけて朝になる希望の朝の風
もう願ってもいいから
濡れたままの魂でこごえる魂のあなたの
もう願ってもいいから
悲痛でも
悲痛な声でいいから
この部屋の中で
この部屋の中で
この部屋で
この部屋の中で
この部屋の
この部屋の中で
この部屋の中で